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クラゲブームはこうして始まった!仕掛け人にインタビュー【前編】
クラゲといったら「水族館の癒し」として欠かせない存在。クラゲ人気は水族館だけではありません。家庭で飼育する人もいれば、クラゲグッズもいろいろと販売されています。
そもそも、なぜクラゲ人気が高まったのでしょうか?
残されている資料が少ない中、クラゲブームの立役者、矢崎 洋(やざきひろし)さんに幸運にもお話を聞くことができました。
日本でクラゲブームが沸き起こってから約25年。その経緯とは?
前編・後編と2回に分け、矢崎さんへのインタビューをご紹介したいと思います。
1990年代、水槽メーカー、株式会社ニッソー(現在は株式会社マルカン)に勤めていた矢崎さん。当時、ニッソーはシェア60%を越える水槽メーカーでした。水槽メーカーとして初めて株式を店頭公開したことでも注目された企業です。
natsumi:今でこそ、クラゲは癒しの海洋生物として人気ですが、もともとはそうではなかったと思います。海水浴で刺される。網に絡まり漁師さん泣かせ。たまに中華料理で食べることはあっても、どちらかというと嫌われ者だったんじゃないかと。そんなクラゲを販売するようになったきっかけを教えてください。
矢崎(以下、敬称略):その通りですね。私も海で刺された経験があるので、それまでは決して「好き」と言える存在ではありませんでした。
ところがある日、取引先から「見栄えのいい養殖クラゲを開発したので、鑑賞用として販売してくれないか」と連絡があったのです。種類はミズクラゲ。今でこそ人気者ですが、当時は「何それ?」といった状態でした。
その頃は、天然のクラゲというと、肉厚で透明度の低い個体が一般的。ところが開発したクラゲを見せてもらったところ、傘が透けていたのです。その時、初めて少しだけクラゲをきれいだと感じました(笑)。
クラゲ販売の話があったとき、私の会社の営業マン全員が断わったそうです。
これを聞いた私は、「面白い、チャンスだ」と思いました。正直、価格が高いため売れるかどうかは全く想像がつきませんでしたけどね。
販売を引き受け、熱帯魚屋10店舗ほどに営業に行ってみると、見向きもされなかった。断られた理由は、今まで飼育用としてクラゲを取り扱ったことがないのでハードルが高い、刺される。つまりイメージが最悪だったんです。
natsumi:皆が断ったのに逆にチャンスと捉えるだなんて、クラゲブームが到来するという確信があったのですか?
矢崎:はい。そのきっかけは、ゆったりとした癒し系の音楽を流しながら、クラゲが水中を漂っている姿を眺めていたときのことでした。
傘を開いたり閉じたりする動きが、あたかも音楽のリズムに合わせているかのように見えたのです。
ライトを当てると向こう側が透けて見え、とてもきれい。エサのブラインシュリンプを与えると、四葉のクローバーのように見える胃袋が強調され、縁起も良さそうに感じました。そんなクラゲの姿を見たとき、初めて癒されると感じました。
当時はちょうど「癒しブーム」が来ていたので、世間の人々も、鑑賞クラゲにきっと癒しを感じるはずだと確信しました。
natsumi:クラゲと音楽と矢崎さん。三者がそろったからこそ、その後のクラゲブームにつながって行くんですね。何かしらの運命を感じます。
矢崎:今思い返せば、確かに運命的な出会いが続きましたね。鑑賞クラゲが大々的に知られるきっかけとなったのは、皆さんご存知の「東急ハンズ」との出会いがあったからですし。
先ほど、熱帯魚屋10店舗ほどに断られたという話をしましたよね。その中の1店舗に、「もしも東急ハンズで販売するなら、うちでも扱うよ」と言われたのです。その一言がなければ東急ハンズで販売しなかったと思います。
即、東急ハンズにアタックしたところ、他のお店で断られ続けて来たことが嘘のように、クラゲの取り扱いはすぐに成立。
natsumi:東急ハンズといったら、行けば何かおもしろい物がある、という老舗ですもんね。東急ハンズで、どのようにクラゲの販売をスタートしたのですか?
矢崎:東急ハンズ池袋店で展示販売を始めました。記念すべきクラゲ発売初日は、入り口から入って真正面のエリアに水槽を設置し、5、6匹のミズクラゲがフワフワと漂う姿を披露しました。
もの珍しさもあったのでしょうね、多くの方が足を止めてくださいました。しかも、皆さん、「癒される」と言ってボーッと見とれているんですよ。うれしかったですね。
クラゲの水槽を見てくださった一組目は、親子連れのお客様です。日本経済新聞社(以下、日経新聞)の記者さんが、お客様の「とても癒される」という言葉を記事と供に紙面に掲載してくれました(上画像参照)。
そこからクラゲ人気が広がり始めます。
日経新聞の記事を皮切りに、他のマスコミからも取材依頼が来るように。「NHK NEWS おはよう日本」、日本テレビ「ズームイン!朝」、そして、フジテレビ系列「めざましテレビ」では3日間連続で生中継されました。
さらに、日本を飛び越え、アメリカのAP通信や、CBS NEWSからも連絡があり取材を受けました(※1参照)。日経新聞の影響は大きいですね。AP通信で「日本ではクラゲが癒しの生物!?」とかなり驚きをもって報道されました。
おもしろいことに、最初に声がけをして断られた熱帯魚の店舗も、クラゲを販売したいと言ってくださるようになりました。
一気に「時の人」ならぬ「時のクラゲ」となった鑑賞クラゲ。ところが家庭用のクラゲの売り上げは今一つだったとのこと。だけど、それで良かったと矢崎さん。その理由とは?
後編でひも解いていきたいと思います。お楽しみに!
▼CBS NEWS
https://www.cbsnews.com/news/spineless-tentacled-lovable/
▼The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/archive/local/1998/04/11/jellyfish-adapt-swimmingly-as-pets/5b553e27-494b-434a-8efe-fcd3e5d207cb/
▼THE SPOKESMAN-REVIEW
https://www.spokesman.com/stories/1998/mar/22/jellyfish-as-pets-all-the-rage-in-japan-relaxing/
【矢崎 洋さんの略歴】
クラゲブームだけではなく、池袋の東急ハンズに現在の「猫カフェ」の先駆け的存在「ねこぶくろ」をスタートさせたり、家庭用ビールサーバーを爆発的に流行らせるといった実績もある矢崎さん。現在、矢崎さんは、株式会社カルチャービジョンの代表取締役として、人とペットの健康を考えた商品を販売中。2019年には一般社団法人 生きた証 寄付・遺贈基金を立ち上げ、豊かな人生になるためのヒントをテーマに毎月セミナーを運営。2020年からは宇宙に関するプロフェッショナルが講師を務めるセミナー「宇宙大学」も運営。
矢崎さんとお話してみたい方はこちら!
https://space-university.peatix.com/
text/natsumi
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正面から見ると笑っているように見えることからスマイリーブレニーとも呼ばれているイシガキカエルウオ。カエルウオの仲間では小型で大きくならない種類ですが、コケもよく食べます。
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